妊活の正しい大豆製品の摂り方
【薬剤師が解説】妊活の正しい大豆製品の摂り方
こんにちは!
卵質改善コンサルタント薬剤師のchiaki(プロフィールはこちら)です^^
妊活中の方は「タンパク質を意識して下さいね」という情報をよく目にすると思います。
タンパク質は私達のカラダを作るための栄養源で、
臓器、爪、ホルモン、免疫細胞、抗体、骨、血管など様々なものがタンパク質を材料として作られています。
特に妊活中に不足すると女性ホルモンがうまく生成できないため、
女性ホルモンバランスが崩れ、排卵まで卵子が育たなかったり、
子宮内膜が着床に十分な厚さにならず、
結果的になかなか授からない、ということになる可能性があります。
このことから「タンパク質は意識してとってください」と言われているのです。
タンパク質を多く含む食品として良く紹介されるのが大豆食品。
私のクライアントさんの中でも、
「タンパク質をたくさん取るために大豆製品メインで食べてます!」
という方がいらっしゃるのですが、
ちょっと待って下さい、それって少し危ないですよ。
というのが今日のテーマです。
大豆製品の食べ過ぎは子宮内膜に良くない影響がある可能性があるため、
かえって授かりにくい体になるかもしれないことをご存知でしたか?
そこで今回は、
- 大豆製品を食べ過ぎると、どうして授かりにくい体になってしまうのか?
- タンパク質を上手に摂取するための大豆製品との付き合い方
について詳しく解説していきます。
大豆製品と大豆イソフラボン
大豆製品の代表といえば、味噌、醤油、豆腐、湯葉、豆乳等があります。
日本食に欠かせない、美味しくてミネラル分やタンパク質も豊富な食材です。
大豆製品で注目したい成分が大豆イソフラボンです。
植物性エストロゲンと言われる
女性ホルモンの一つであるエストロゲンが、
排卵にむけて卵子を大きく育てることや、子宮内膜に栄養を送るための血管を作る、
大事な働きがあることは有名なのでご存じの方は多いと思います。
実は、大豆イソフラボンは植物性のエストロゲンと言われているのです。
エストロゲンは体内でエストロゲン受容体に結合することで、エストロゲン作用を発揮します。
一方で、大豆イソフラボンは化学構造がエストロゲンに似ていることから、
エストロゲンとしてエストロゲン受容体と結合し、エストロゲン作用を発揮します。
積極的に摂取すべき人、そうでない人
大豆イソフラボンを摂取するとエストロゲン作用が発揮されることを利用して、
特定機能食品としてサプリメントもたくさん販売されています。
ここで注意して欲しいのは、
サプリメントが期待されている主な効果は更年期障害の軽減、骨粗しょう症の予防であることです。
更年期になると体内でのエストロゲン分泌が減るため、エストロゲンが不足しがちです。
その結果、骨が弱くなったり、イライラ感、抑うつ感などの更年期障害になりやすくなります。
そのため、更年期になった場合はサプリメントなどで、
エストロゲンを補完するのが良いとされています。
しかし、妊活している方となると話は別です。
そもそも、妊活中の年齢では必要量のエストロゲンが正常に分泌されています。
ここに外部からエストロゲン作用がある大豆イソフラボンを摂取すると、
体としてはエストロゲン過剰の状態になってしまいます。
エストロゲン過剰のリスク
エストロゲンは、卵胞期に子宮内膜に螺旋動脈という血管を形成します。
黄体期になると、プロゲステロンの働きによって螺旋動脈から血液が供給され、
子宮内膜の細胞が増殖することで、着床に最適な厚さの子宮内膜が形成されます。
しかし、エストロゲン作用が過剰になると子宮内膜増殖症という疾患になる可能性が出てきます。
子宮内膜増殖症とは
子宮の内側を覆っている子宮内膜が、異常に厚くなってしまう病気です。
子宮内膜は妊娠したときに、受精卵が着床するときのベッドとして機能するものです。
子宮内膜増殖症は、ベッドが過剰に分厚くなってしまった状態です。
通常、厚くなった子宮内膜は、妊娠しないと月経のたびにはがれ落ち、また新しい子宮内膜が増殖してきます。
しかし増殖症などで過度に子宮内膜が増殖すると、月経の際に全てがはがれ落ちなくなり、
子宮の中に分厚くなった古い内膜が、いつまでも残ってしまうのです。
そうなると次第に悪性化して子宮体がんに移行する可能性があると言われています。
大豆イソフラボンの作用
大豆製品に含まれる大豆イソフラボンは主に2種類です。
①大豆イソフラボン配糖体・・・豆腐や豆乳、湯葉などの大豆製品に主に含まれる。
②大豆イソフラボンアグリコン・・・味噌、醤油、納豆など大豆発酵食品、サプリメントに主に含まれる。
これらの大豆イソフラボンは体内でどうやってエストロゲンとして作用するのでしょう?
イソフラボン配糖体は直接エストロゲン受容体と結合することは出来ません。
腸内細菌の働きにより、糖が切り離されることでイソフラボンアグリコンに変化することで、
エストロゲン受容体と結合し、エストロゲン作用を発揮します。
ポイントは、どの大豆製品も最終的にイソフラボンアグリコンに変化してエストロゲンとして作用するということ。
つまり、エストロゲン過剰について、みなさんに注意していただきたいのは、
食品やサプリメントに含まれている、イソフラボンアグリコンの量になります。
このイソフラボンアグリコン量を踏まえて、
どのように大豆製品を摂取してけばいいのかお話していきます。
大豆イソフラボンの適切な摂取量
2021年時点で、日本における大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値は、
大豆イソフラボンアグリコン換算で1日70〜75mgです。
これも1日この量に抑えなきゃということではなく、
1週間平均として1日70-75mg程度取れていれば問題はないのです。
一方で、大豆イソフラボンアグリコン換算で150mgを健康に影響を与える量としても設定されています。
これらの上限値は、2006年に食品安全委員会が発表した報告書が元になっています。
大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方/食品安全委員会 2006年5月
https://www.fsc.go.jp/hyouka/hy/hy-singi-isoflavone_kihon.pdf
でも、もしこの内容を見て、「大豆製品を控えなきゃ!怖いから食べるのやめよう!」
と思われたなら、それは少し待ってください。
まずは、食材にどのくらいイソフラボンアグリコンが含まれているか、一緒に確認してみましょう。
大豆製品はこうやって食べよう
下の表は、イソフラボンアグリコンを含む代表的な食品と含有量です。
食品 | イソフラボンアグリコン量 |
納豆1パック (1パック45g) | 35.5mg |
豆乳コップ1杯 | 35mg |
豆腐1丁 (1丁300g) | 80mg |
高野豆腐3個 | 21mg |
味噌大さじ1杯 | 11mg |
油揚げ1枚 | 10.8mg |
醤油大さじ1杯 | 0.14mg |
例えば、
朝:お味噌汁(味噌大さじ1/2)+納豆1パック [41mg]
昼:大豆製品なし
夕:お味噌汁(味噌大さじ1/2)+豆腐100g [32.2mg]
という食事をとった場合、
1日のイソフラボンアグリコン摂取量は73.2mgで上限内。
もちろん150mgにも程遠い量です。
1日150mg摂取する食事とは、
朝:お味噌汁(味噌大さじ1/2)+納豆1パック [41mg]
昼:豆乳コップ1杯 [35mg]
夕:お味噌汁(味噌大さじ1/2)+豆腐1丁 [85.5mg]
合計:161.5mg
このくらい取らないと超えることはできません。
つまり、
積極的に大豆製品を摂取しない限りイソフラボンアグリコン150mgを超えることはないので、
普段の食生活では問題ないのです。
過度に怖がって、栄養成分の宝庫である大豆製品を利用しないことのほうがもったいないです。
一方で、
現在大豆製品メインで食生活をされている方や、
大豆イソフラボンが含まれているサプリメントを服用されている方は、
イソフラボンアグリコン150mgを超える可能性があるので注意が必要です。
まとめ
大豆製品には大豆イソフラボンが含まれており、
体の中で代謝され、大豆イソフラボンアグリコンに変化することで、エストロゲン作用を発揮します。
妊活中の年齢の女性の場合、体内で必要量のエストロゲンが分泌されるので、
サプリで大豆イソフラボンを補う必要はありません。
日本ではイソフラボンアグリコンの摂取基準は1日70~75mg。
健康への影響から1日150mgが摂取上限として設定されています。
通常の食事ではイソフラボンアグリコン摂取量が150mgを超えることは考えにくいですが、
大豆製品中心の食事生活や、サプリメントに大豆イソフラボンが配合されている場合は注意が必要です。
大豆製品にはタンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれるので、
適量を守って食べることはカラダにとって良いことです。
適正な量で大豆製品を摂取しているか、普段の食生活を見直して、
うまく大豆製品を取り入れてみてくださいね。
【おまけ】おすすめのタンパク質摂取法
動物性タンパク質(お肉・お魚)と植物性タンパク質(大豆製品)は1:1の割合で摂取するのが理想的。
例えば、
朝:納豆1パック
昼:卵1個+鳥ささみ2本
夕:味噌汁+焼き魚
という感じで動物性、植物性両方とるように意識してタンパク質を摂取してみてください。
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